2020年3月2日月曜日

お染久松

春の柔らかい日差しに器たちが気持ちよく乾いてくれます。


なんと穏やかな日でしょう。世間の騒ぎが嘘のようです。でも、こちらの体調も決死と良いとは言えません。腰はなかなかまっすぐ伸びませんし、今朝はお腹を壊すし、工房には猿が出てくるしと。まあ、そのくらいのことですから、大したことでもないのですが。今読んでいるのは岡本綺堂の短編集です。その中にちょっと面白い話が出ていました。明治23年の冬に、日本で初めてインフルエンザが流行り始めたそうです。24年の春にはそれが広がって、かなりの死者が出たそうです。なんでも、フランスの船が横浜に入って、そこから広まったようです。そのインフルエンザが、当時はお染風邪と呼ばれたということでした。名前の由来は「お染久松」という歌舞伎の悲恋話から、恋の病がうつりやすいというようなことからだろうと語っています。そこで、世間では「久松留守」と書いた札を家の前に貼ることが流行ったそうです。久松を慕ってお染がやってくるのを防ごうという、おまじないのようなものだったようです。調べてみると、明治23年は1890年ですから、今からちょうど130年前の出来事です。あれからそれだけの年月が経ったわけですが、未だにインフルエンザは克服できていません。毎年、数千人という人が日本で命を落としているそうです。アメリカでは万単位ですから考えると恐ろしくなります。でも、インフルエンザが最初に入ってき頃のことなど、現在はほとんどの人がは知りません。ただ当たり前のように、今年も季節到来とワクチンの予防接種をするぐらいのことでしょう。今、大騒ぎのコロナウィールスもこの先どのようになってゆくか、見当もつきませんが、数十年後、昔、新型コロナというのが、初めて流行った時はそれは大騒ぎで・・・、などという昔話のネタになる時が来るのでしょうか。こういう騒動も時間とともに、いつの間にか慣れっこになるのかもしれませんねえ。