夕方になって急に陽が差してきました。梅雨が終わったかなという理由のない実感。一人、工房で作業をしていたら、突然前にもこんな日があったようなという妙な記憶がよみがえってきました。どういう事でしょう。夏を実感するとそんな思いにかられるときがあります。子供のころ、強い日差しの中、母親に手を引かれながら墓参りに行った日の事とか。くっきりとよみがえる絵。白いシャツを着て麦わら帽子をかぶり、汗を流しながら歩いた青山墓地への道とか。今日、工房を訪れたお客さん。ここで何年ぐらいやっているのですかと聞かれて、つい大昔の事を語ってしまいました。まだ二十歳を過ぎたばかりのころ、深夜の高速バスに乗って、大阪で乗り換えて夜行列車の硬い座席に揺られて朝早くに西鹿児島駅にたどり着いて、フェリーに揺られて屋久島にたどり着いた日の事など。大学で絵を志していた話も、どんな画家が好きでしたかと尋ねられて、印象派の画家から大学に入ったころのニューヨークの抽象表現主義に影響を受けた話など。屋久島で土を掘って、薪を切りに山に入ったり、窯を焚いたりというような。今思うとあの頃は若くて元気だったなあと思います。何しろ、太い松の木をチェンソーで切りながら真夏に何昼夜も窯を焚いていたのですから。今朝など三十分ほど草払い機を回していたらすっかりばててしまいました。歳は取りたくないものですねえ。