ロバートフォーチュンという、スコットランド人が今から160年前に書いたものです。当時の日本人の暮らしぶりがイキイキと描かれています。植物を愛して、田んぼや畑を丁寧に耕し、信仰心が熱く、今とあまり変わらない国民性が興味深く写されています。彼はプラントハンター、日本の珍しい植物を探して国に送るのが職業です。そんな人間が江戸の郊外を歩き回って、植物ををはじめ、珍しい昆虫、それに庶民の暮らしを観察して、細かい筆致で描かれています。読んで感じたことは、今の暮らしとあまり変わらないこと。国民性も生活ぶりも、幕末がそれほど遠いものに感じられませんでした。ふと祖父が浮かんできました。慶応三年、明治元年の生まれ。鹿児島で育ち、東京で所帯を持ったようです。職業軍人で日清、日露の戦争に参加しました。子供の頃はすでに、引退して、四谷の家のベランダでオモトの世話が趣味でした。最近、息子が観葉植物を自ら焼いた植木鉢で育てはじめました。なんだか。祖父を見ているような気がします。人間の性格は受け継がれるものなのでしょうか。